North Shore Serenade ノース・ショア・セレナーデ
(海へ続く道 2)
♪Take me down to the North Shore♪
ノースショアへのドライブ。
Kam Highway をまっすぐ行けば、水平線の下にハレイワ・タウンが見えてくる。
急に思い立ってハレイワに向かった。
なぜかというと・・・
この本の中にあるエッセイを読んだから。
「チキン・スープ・シリーズ」知ってる?
全米ベスト・セラーとなったシリーズもので、病んだ心をあったかくしてくれる癒し系エッセイ集、とでも言うかな。最新刊はハワイがテーマで、多くの著名人を含む、ハワイ・ロコ・ライターによるエッセイが詰まっているんだ。そのなかのひとつ『Guardian of the Trees』という一編を、タイトルに惹かれて読んでみた。作者はJeff Gere。
ハレイワにある「フジオカ・マーケット」の駐車場での出来事をつづった短い話。
こんなストーリーだよ。
というような話。
読み終わってふと気になった。
その木は今もあるだろうか?
そしてノースショアへのドライブに出かけたというわけ。
フジオカ・マーケットはハレイワの街のメイン・ストリートの中ほどにある。レトロな富士山の絵の大きな看板が目印だ。
僕はフジオカ・マーケットのパーキングに車を入れて、ハッとした。
そうだった。もうここはフジオカ・マーケットではなくなってしまったのだった。
ハレイワはごぶさただったので忘れていた。
名前が変わりマラマ・マーケットとなったこの店のパーキングに、木は一本もなかった。
♪Take me down to the North Shore♪
ノースショアへのドライブ。
Kam Highway をまっすぐ行けば、水平線の下にハレイワ・タウンが見えてくる。
急に思い立ってハレイワに向かった。
なぜかというと・・・
この本の中にあるエッセイを読んだから。
「チキン・スープ・シリーズ」知ってる?
全米ベスト・セラーとなったシリーズもので、病んだ心をあったかくしてくれる癒し系エッセイ集、とでも言うかな。最新刊はハワイがテーマで、多くの著名人を含む、ハワイ・ロコ・ライターによるエッセイが詰まっているんだ。そのなかのひとつ『Guardian of the Trees』という一編を、タイトルに惹かれて読んでみた。作者はJeff Gere。
ハレイワにある「フジオカ・マーケット」の駐車場での出来事をつづった短い話。
こんなストーリーだよ。
ある土曜の朝、工事中のその駐車場にちょっとした人だかりができていた。
敷地内に立つ一本のりっぱな木の前に老婆が立っている。何日も洗ってない老婆の白髪は束になってかたまっている。足元は裸足、そして色あせたボロ着。そんな姿で独り言をぶつぶつ言いながら歩く彼女の姿がここらではよく見かけられる。老婆はこの界隈に住み着いているホームレスだ。
木の前に立つ老婆に工事現場の作業員が手を焼いている。ブルドーザーで木をなぎ倒そうとしたところへ、どこからともなくこの老婆がいきなり立ちふさがったのだ。
「気でも違ったのか?」そう思いながら、仕事の邪魔をしないでくれと、作業員が頼む。
老婆は言う。
「この木を切り倒させやしないよ。私がここにいる限りは。」
仕事だから仕方がねえんだよ、そう思いながら作業員は別の木にブルドーザーを走らせる。老婆がまた立ちふさがる。さらにもう一本の木に向かう。老婆が立ちふさがる。
困り果てた作業員はボスを呼ぶ。
BMWで地主が駆けつけ、説得にかかる。彼には耳を貸さず、老婆はさきほどの作業員にむかって叫ぶ。
「あんたロコだろ?ここで育ったんだろ?あんたが小さいときからこの木はここになかったかい?」
老婆の声は怒りに震え始める。
「どうしたっていうんだい?お前さんの子供や孫のためにもこの木がここにあったほうがいいと思わないのかい?」
地主に顔を向け老婆はきっぱりと言う。
「絶対に切らせやしないよ。この私がそうはさせない。」
地主はポリスを呼んだ。
ポリスは老婆に、地主が所有する土地に関して持つ権利について説明し、不法侵入で逮捕しなければいけなくなる前に立ち去るよう説得する。
じっとうつむいて聞いていた老婆が初めて顔を上げた。
「権利?あの人の権利?」
老婆の口調が早まる。
「あんた、聞きな。よく聞くんだよ。この地球上でもっとも孤立した土地はどこだい?地球上のどこからも一番遠くにある場所はどこだい?」
ポリスはだまっている。
「ハワイさ。」その言葉を発した老婆の声は、驚くほどやさしいトーンだった。
「地球上で他に類を見ない固有の植物や鳥がいる場所、絶滅危惧種の植物や動物の数が一番多い場所、それがハワイさ。」
一瞬の沈黙の後、ポリスに向かって聞く。
「病気になったとき、どうする?」
「医者に診てもらう。」ポリスが答える。
「医者は何をする?」
「薬の処方箋をくれる。」
「薬はどこから来る?」
「さあな、製薬会社かい?それとも実験室のやつらって言えばいいかい?」
「じゃあ、実験室のやつらはどうやって効用を知ると思うんだい?」
ポリスは言葉が出ない。
「やつらは植物を研究するんだ。植物をね。もし、珍しくて貴重な植物がみんななくなってしまったら、どうやって新しい病気を治療する薬を作るんだ?」
老婆のエネルギッシュな語りと論理展開に、みんな言葉を失った。
「人にはね、人生に一度、眼を覚まして“NO”と言わなければいけない時がある。そのときは、立ち上がって意思表示しなければいけないんだ。私にとってはね、今日がその日さ。あんたに言うよ、そして誰にでも言うよ。この木を切らせはしない。今日も、明日も、ずっと、永遠にね。」
クラクラさせる強い陽射しのなかで、人々は沈黙していた。
老婆はうつむいている。
後ろで誰かがつぶやいた。
「このひとは心から語っている。この女性の言っていることは正しい。」
地主の声だった。
数年後、晴れた日のフジオカ・マーケット。駐車場に入って古い大きな木の木陰に車を止め、あの日のことを振り返る。木は救われた。身体を張ってこの木を護った老婆はもうここにはいない。ハナに移ったといううわさだ。
というような話。
読み終わってふと気になった。
その木は今もあるだろうか?
そしてノースショアへのドライブに出かけたというわけ。
フジオカ・マーケットはハレイワの街のメイン・ストリートの中ほどにある。レトロな富士山の絵の大きな看板が目印だ。
僕はフジオカ・マーケットのパーキングに車を入れて、ハッとした。
そうだった。もうここはフジオカ・マーケットではなくなってしまったのだった。
ハレイワはごぶさただったので忘れていた。
名前が変わりマラマ・マーケットとなったこの店のパーキングに、木は一本もなかった。
by NuiDaisuke
| 2005-05-10 20:04
| 木
フォト・エッセイ from Hawaii
by NuiDaisuke
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コメント返しはしていませんが、いつもいただいたコメント読んで感謝しています。ありがとう。
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